2006.11.29(Wed)

ケン・ローチ監督作品『麦の穂をゆらす風』2006年 イギリス=アイルランド=フランス
2006年11月29日 シネカノン有楽町にて鑑賞
荒筋:
1920年のアイルランド南部の町・コーク。医者を志す青年デミアンはロンドンでの勤務がきまり、アイルランドを離れようとしていた。そんな時、仲間がイギリスから送り込まれていた武装警察ブラック・アンド・タンズの暴行を受け、命を落としてしまう。事件をきっかけに医師になる志を捨てたデミアンは、やがてアイルランド独立を目指す戦いに、仲間とともに身を投じていく。そんな彼らのゲリラ戦に苦しめられたイギリスは停戦を申し入れ、戦いは終結するのだが、両国間に結ばれた講和条約の内容の是非をめぐって、アイルランドは内戦に突入してゆくのだった。
ネタバレします。重い重過ぎる、つらい……。全く、全く、何一つ救いの無い映画。
事前に公式サイトを見ていたり、アイルランドの内戦について知識がある人ならば、主人公が死んでしまうところまでは予測出来るのかも知れません。けれどこの映画は、その先にすら何一つ救いはありません。デミアンの恋人の叫びが頭の中で反響している状態で、エンドロールを呆然と観る事になるでしょう。
友達と観に行ったのですが、友達はイギリスが大好きで、今年の夏にもホームステイに行ったくらい好きで、その大好きなイギリスがあんな酷い事を…と大きなショックを受けていたようです。
映画の作りはとても高度。
脚本に無駄や隙が無い。「愛するものを奪われる悲劇を、なぜ人は繰り返すのだろう。」というこの映画のキャッチコピー以上でも以下でもない事が2時間の中で起こっていく、ただそれだけなんです。’悲劇は繰り返す’事が映画の後半でわかっていくんですが、そのやりきれなさは凄いものがあります。
「淡々と描く事の衝撃」を今回嫌と言う程実感しました。人が「普通に」死んでいくという恐怖です。『ヒトラー 最期の12日間』も同じような手法が使われていたのですが、ごく普通の若者が当事者で、もうそれが日常になってしまっているという点で、今回も凄く辛かった。
力強いアイルランドの音楽も、美しい風景も全て、悲しみという感情と一緒に見たり聴いたりせざるを得ない。
あと主人公の演技が壮絶だった。常に「俺もうすぐ死ぬんだろうなー」って顔をしていた。
このアイルランドの紛争、教科書の上だったら3行程度で済む事かも知れない。けれどそこには3行では語り尽くせない悲しみや嘆きが確かに存在していた事をこの映画は教えてくれます。そして、負の歴史もね。
鑑賞後に友達と話し込んだんですが、日本人が作る戦争映画は全て被害者視点になってしまっていて、戦争の全てを知るには不足だと。きっと問題になるだろうけど、侵略の歴史とかを題材にとった映画も作るべきだと。本作の監督もイギリス人でこういう映画撮ってるわけだし。是枝監督とか作ってくれないかなー『誰も知らない』撮れたんだから撮れるんじゃないかな。なんて。
しかしね、この映画を否定する気はさらさら無いんだけど、このような映画がカンヌ映画祭でパルムドールを獲ってしまうこの世界は相当病んでいるなぁと心配になります。
絶対に一人で観に行くべきでは無い。鑑賞後、スタバでうずくまっちゃったくらいなので、真面目な話も出来る様な間柄の人と観に行くべきです。そして特に若年層に観て欲しい。ショックだから。
>EntryTime at 2006/11/29 22:52<